チーターもガゼルも、足が遅いと子孫を残せない
チーターは地上最速の動物。
時速100kmの俊足を生かして狩りをします。
狙われるのはたいていトムソンガゼル。
追いつかれると食べられてしまうので、ガゼルは必死で走ります。
チーターだって飢え死にしたくありません。
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速く走れる者だけが生き残り、子孫を残す。
こうしてチーターもガゼルも、世代を重ねるごとにどんどん足が速くなりました。
チーターの体は軽くなり、ケンカがとても弱くなりました。
せっかく獲った獲物をハイエナやジャッカルに横取りされたり…。
でも良いのです。
ガゼルに照準を合わせ、速く走るために進化を続けてきた結果なのです。
これを【共進化】と言います。
チーターとガゼルは共に進化を遂げた特別な関係なのです。
では人間は、何と競争して進化したのでしょうか?
ガゼルに対するチーターのように、人間を専門に襲う猛獣はいません。
ガゼルのように走らなくても良い。
それはありがたいことです。
でも、人間を襲う怖いのがいます。
病原体です。
新型コロナウイルスにとっては、「三密」で生活する人間は格好のターゲットです。
(ウイルスが生物か無生物はについては横に置いておきます)
新型コロナウイルスは、もともと野生コウモリの体内で共生していたと言います。
それがある日、人間に乗り移ってきた。
コウモリは大丈夫なのに、なぜ人間は重症化したり、時には死んでしまったりするのでしょうか?
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ここにも、【共進化】が関係しているようです。
コウモリと仲良しのウイルス…人間に乗り移ると大変なことに!
進化生物学や感染症学の専門家の話をざっくりとまとめると、こうなります。
コロナウイルスとコウモリが初めて出会った時、コウモリだって病気になったはずです。
かなりの数が死んでいったでしょう。
でも、何とか生き延びたコウモリもいた。
彼らはウイルスに耐性を持ち、次の世代に遺伝子を残します。
ウイルスが変異しても新たに耐性を獲得する、それを繰り返していきます。
一方、ウイルスにも強毒タイプと弱毒タイプがある。
コウモリを死なせてしまえば、ウイルスは増えることができません。
強毒タイプはそこで終了。
それを繰り返すうちに、重症化させないウイルスだけが繁栄したと考えられます。
ウイルスに強いコウモリと、コウモリにやさしいウイルス。
コウモリとコロナウイルスの【共進化】です。
共に進化した結果、コウモリとウイルスは安定した共生関係になりました。
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ところがこのウイルスは、人間とは共生関係ではありません。
だから人間に伝染すると大変な事になる。
ミスマッチを起こすのです。
怖いウイルスは密林の野生動物からやってきた
近年、新興感染症が問題になっています。
2002年SARS(重症急性呼吸器症候群)はキクガシラコウモリに潜んでいたコロナウイルスが、家畜などを媒介して人間に伝染したと考えられています。
1976年以降、アフリカをパニックに陥れたエボラ出血熱のウイルスはオオコウモリからのものらしい。
1980年代、世界に急速に広がったHIVウイルスはサルから人間に伝染したと言われます。
どれも、人間が密林を開拓して農地にしたことで、コウモリやサルの中に潜んでいたウイルスが人間と出会ってしまったのが原因だといわれています。
ひとたび人間社会に入ってしまえば大流行する。
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もしも100年前だったら?
ワクチンも抗ウイルス薬もありません。
もっと悲惨なことが起こり、やがて収まっていくという流れだったでしょう。
大昔のコウモリのように、耐性を獲得した人々だけが生き延びたかも知れません。
人間とウイルスが【共進化】する間には、たくさんの命が失われます。
だから今、犠牲になった人たちのことを思いながらも、医学のありがたさを感じずにはいられません。
ガゼルを追うチーターのような関係ではなく、いきなり人間を襲う病原体。
病原体と同じぐらい怖いもの…それは人間かも
そしてもうひとつ恐ろしい生きものがいました。
人間です。
人は人を殺します。
大量殺戮は人間だけのものです。
チーターは自分が食べる分しか獲物を殺しません。
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そもそも多くの動物は食欲と性欲を満足させたら、それでおしまいです。
余計なエネルギーは使わないのです。
人間の場合、食欲と性欲には限界がありますが、金銭欲と支配欲、権力欲はとどまることを知りません。
それが暴走すると、どこまでも殺戮が続く。
もちろんやられる方も黙ってはいません。
毎日ニュースで見る通り。
戦争です。
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その原因は、領土、資源、宗教、民族、イデオロギーなど。
領土や資源には実態がありますが、宗教とイデオロギーは、脳が作り出すまぼろしのようなものです。
信じる人にとっては命よりも大切なもの、そうでない人にはどうでも良いもの。
だから話し合っても折り合えない。
プーチンの脳の中のまぼろし。
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人間は脳が肥大化した動物です。
太古の昔から、人類は仲間と支え合い、獲物を倒して生きてきました。
脳を使い、集団の団結力を活かして敵と戦う。
その敵は、獲物ではなくて人間の時もあったでしょう。
時が流れました。
人間を倒していた猛獣が絶滅したか絶滅危惧種となった今、人間の敵は人間しか残っていません。
人間の競争相手は、かなり前から人間だったということです。
人間とは、そのように進化してしまった、極端にめんどくさい動物なのかも知れません。
いくらめんどくさくても、そこから逃れることはできません。
自分だって人間なのですから。