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なまえの表記はややこしい…動物名も地名も

ウクライナの首都はキエフか?キーウか?

日本テレビのニュースを見ていたら、ウクライナの首都が「キーウ(キエフ)」と表示されていました。

ウクライナに侵攻してくるロシア語読みの「キエフ」をやめて、ウクライナ語の「キーウ」に変えたようです。

日本でなじみ深い地名であるにもかかわらず、放送局が率先して表示を変えるのは珍しいことです。

ロシアによる侵略が、第二次世界大戦後の世界では極めて異例だからでしょうか。

(※追記:この6日後の3月31日に、日本の外務省が「キエフ」の呼称を「キーウ」に変更すると発表したのを受け、マスコミ各社は一斉にそれにならいました。)

私がテレビ局に勤めていた時代もいくつかの国や都市の表記が変わりました。

最近では、2015年に「グルジア」が「ジョージア」になりました。

そもそも「グルジア」は1991年にソビエト連邦が崩壊してからの表記。
それ以前は、ソ連を構成する「グルジア共和国」でした。

ソ連が崩壊した時、TBSでも独立した国々の表記一覧表が配布されました。
カザフ共和国がカザフスタンに、キルギス共和国がキルギスタンに、ウズベク共和国がウズベキスタンになりました。
「…スタン」が印象的だったのを覚えています。

その後、2008年の紛争をきっかけにロシアとグルジアの関係が悪化したため、
彼らはロシア語読みの「グルジア」を嫌い、英語読みの「ジョージア」に変更しました。

やがて日本政府がそれを受け入れ、マスコミも倣ったのです。

インドの地名もずいぶん変更になりました。
ボンベイはムンバイに、マドラスはチェンナイに、カルカッタはコルカタに変更されました。
これも、植民地時代の呼び名に別れを告げようと、インド政府が決めたことです。

こういうことは「決定」に従うのがマスコミの普通のやり方なので、今回の日本テレビの決定は意外に思えました。

ハンドウイルカ?バンドウイルカ?どっちが正しい?

ハンドウイルカ?バンドウイルカ?

動物の名前についても、色々なことがありました。

決まりが曖昧だからでしょう。
動物たちは「こう呼んでほしい」とは言いません。

「どうぶつ奇想天外!」がスタートした頃、動物名の表記は標準和名。
わからない時には千石正一先生に従うと決めていました。

「ハンドウイルカ」とも「バンドウイルカ」とも呼ばれるイルカがいます。

番組では千石先生に従い、「ハンドウイルカ」で統一していました。
ところがある時、ある水族館の館長が「バンドウイルカと表示しなければ撮影を許可しない」とおっしゃるので、その時だけは「バンドウイルカ」にしました。
千石先生には事情を話して納得していただきました。

番組を毎週見ている視聴者は「どっちなの?」と思うかも知れません。
水族館の見学者もまた、そう思うかも知れません。

プロデューサーの私は、ホンネを言えば、どちらでも良いのです。
だからもちろん、撮る方を優先します。

ダックスフント?ダックスフンド?どっちが正しい?

ダックスフント?ダックスフンド?

「ダックスフント」というドイツ原産の犬種。
この表記は千石先生のこだわりでした。

表記はDachshund、ドイツ語読みで「d」は濁りませんから「ダックスフント」。
「ダックスフンド」は英語読み。

固有名詞は現地の読み方を尊重することがほとんどです。
ドイツ人のペーターさんをピーターさんとは呼びません。
それに倣えば「ダックスフント」。

でも、ジャパンケネルクラブの表記が「ダックスフンド」ですから、「ド」にもお墨付きが与えられています。

だから、番組では基本「ト」だけれど、取材相手が「ド」といえば「ド」にしました。

これも柔軟に対処しました。

マンタ、バブーン、バッファローは標準和名ではない

オニイトマキエイ(マンタ)

「マンタ」というエイの仲間がいます。
標準和名は「オニイトマキエイ」です。

通称と標準和名が違う時、当初私たちは「わくわく動物ランド」時代からの流儀で「標準和名(通称)」と記していました。
だからこの魚は「オニイトマキエイ(マンタ)」になります。

同様に「サバンナヒヒ(バブーン)」、「アフリカスイギュウ(バッファロー)」という表記も登場しました。

サバンナヒヒ(バブーン)
アフリカスイギュウ(バッファロー)

番組がスタートして1〜2年がたった頃、羽仁進監督を招いて「羽仁進のマザーアフリカ」シリーズが始まりました。

それらの作品に感動した私は、このシリーズを監督の「特別区」にしてお任せすることにしました。

羽仁監督は自由ですから、「バブーン」や「バッファロー」に標準和名をつけません。
アフリカではガイドやレンジャーから普通にそう呼ばれているのですから。

そうしているうちに、これが他のスタッフに伝染し、「標準和名(通称)」という表記がずるずると乱れてきました。

名称表記に対するプロデューサーの無関心。
仕切りが甘いので、必然です。

やがて、「マンタ(オニイトマキエイ)」のように、通称が標準和名より前に来るようになりました。
私の知らないところで、ディレクターたちと千石先生が話しあって決めたのだと、後になって知りました。
プロデューサーが仕切らないので、自分たちで決めたそうです。

変な楽しみ方ですが、YouTube「どうぶつ奇想天外/WAKUWAKU」の動物名表記に注目すると、いろんなパターンがあることがわかるはずです。

【サバンナ最強!?】バッファローを狩る屈強なライオンたちが『吸血ツエツエバエ』に襲われて大パニック!

この動画では、スーパー表記は「アフリカスイギュウ」、ナレーションは「バッファロー」になっていました。
いろんなバージョンができてしまったようです。

今さら遅いのですが、標準和名に統一すべく仕切っておくべきでした。
反省。

日テレが単独で行った呼称変更「キーウ」。
それへの違和感がキッカケで、反省文を書きました。

要するに、地名も動物名も、名前は「公のもの」ということです。