「マウンティング」とか「マウントをとる」とか言います。
自分の方が上だと自慢したり、相手を下げたりすることですね。
人間は何かにつけ、どっちが偉いのか比べたがる生きものです。
ニホンザルの群れのオスは、自分の順位をものすごく気にします。
お互いの態度で、どちらが上位なのかを、いつも確認しあって暮らしています。
そこに、哀しいドラマが生まれます。
YouTubeチャンネル「どうぶつ奇想天外/WAKUWAKU」には、それを伝える検証動画があります。
1991年「わくわく動物ランド」で放送されたものです。
【検証】順位の低いサルに鏡を見せると『マウンティング』をお願いしてしまうという悲しい性」
日本モンキーセンター犬山野猿公苑(1997年閉鎖)のニホンザルの群れの中に、鏡を入れてみました。
サルたちにとっては初めて見る鏡。
鏡に映った自分の姿には見覚えがないので、よそ者に見えるはずです。
リーダー(第一位)のサルが鏡の前にやってきました。
彼は見知らぬサル(鏡に映った自分なのですが)が偉そうにしているのを見て激怒。
激しく威嚇しますが、同じように威嚇されてしまいます。
そんな生意気な相手を力づくで痛めつけようと鏡に向かって突進。
激しく殴ったり噛みついたりして、鏡を壊してしまいました。
リーダーは敵が消えたので、意気揚々と去っていきます。
大勢が見守る中、リーダーのメンツも保たれたようです。
中ぐらいの順位のサルが来ました。
彼は、鏡に映っている自分の姿に興味津々。
その存在を確認したくて触ろうとしますが、触れません。
鏡の後ろに手を回したり、鏡に登ったり降りたり、なかなか理解できない様子です。
さて、劣位のサルが来ました。この動画の主人公です。
劣位のサルは「マウンティング」をお願いする
彼は、鏡の中の(見知らぬ)サルをしばらく観察していましたが、やがて、鏡に向かってお尻を向けました。
鏡の中の相手にマウンティングをお願いしたのです。
マウンティングとは、自分の優位性を示すために、相手に対して馬乗りになる行動のことです。
このサルは、鏡の中の自分に対して「私は順位が劣るので、どうかマウンティングをしてください」とお願いしたのです。
ところが、その相手は何もしてくれないどころか、逆に、お尻を差し出してきます。
「いやいや、どうぞマウンティングをお願いします」と再度お尻を向けますが、どうしても乗ってくれません
彼はだんだん混乱し、不安になってきたようです。
この検証では、ほかにもハプニングが記録されています。
それは動画でお楽しみください。
人間の社会にも、地位とかお金とか学歴とか、何かにつけて“順位”があるのが現実です。
マウント取ったり取られたりしながら生きています。
この動画は、上司に媚びへつらうサラリーマンのカリカチュアとして面白いし、少しだけ哀しくもあります。
※こんな上司、いませんか?(イメージ)
さて、これは観察のために飼育されている群れの中のお話です。
人間は自由なのか?飼育されたサルなのか?
実は、野生のサルでは事情が少し違ってきます。
嫌なら群れの外に飛び出して、他の群れで最下位からやり直すという手があるからです。
別の群れに移って順位を上げていけば、違った世界が見えるでしょう。
一度群れから離れてしばらく一頭だけで生活し、力をたくわえてから別の群れを乗っ取るという強者もいるそうです。
同じ群れにできるだけ長く居るか、いくつもの群れを転々と渡り歩くのか、ひとり孤独を楽しむのか、野生は厳しいけれど、自由でもあるようです。
こうして見ると、人間社会は一見自由であるように見えて、実は観察用に飼育された群れ社会のように思えてきます。
人間に飼育された動物、ヒト。
ヒトにとっての、ささやかな自由。