コモドオオトカゲとコブダイ。
彼らの共通点は、戦いの「儀式」をすることです。
コブを見せ合う怪魚の「儀式」
コブダイのオスはハーレムを作り、何匹ものメスを従えています。
自分の子孫を残すのが彼らの使命。
縄張りは大切なのです。
「どうぶつ奇想天外!」が佐渡で撮影した動画です。
ライバルのオスが近づくと、ハーレムの主は「あっちに行け!」と追い出しにかかります。
その方法は?
相手とコブを見せあうだけ。
コブダイの世界では、コブが大きい方が勝ちと決まっています。
コブの大きさが同じくらいだったら?
今度は互いに口を大きく開けて見せ合います。
口が大きい方が勝つのです。
傷つけあったりしません。
恋に命は賭けない。
「儀式的」な闘争で決着します。
おかげで「弁慶」と呼ばれたこのオスは怪我することなく、20年もの間、なわばりに君臨したと言います。
コブが小さいオスは、ここで傷つくことなく元気でいれば、いずれ成長してから再チャレンジする可能性が残ります。
よくできたやり方ですね。
コブが大きくなったのはなぜ?
そもそもコブダイは最初はみんなメス。
体が小さいうちは卵を産みます。
その中で特に大きく育った者だけが「性転換」してオスになります。
コブが大きく育って戦いに勝利すれば、ハーレムの主になれるのです。
ハーレムの主になれば、たくさんのメスを相手にするので子供の数はぐっと増えます。
でも、主になれなければ子供はゼロになってしまいます。
そうやって、大きなコブの遺伝子が引き継がれていきます。
コモドオオトカゲの「儀式」
コモドオオトカゲのメスをめぐるオスの戦い。
それは体の大きい方が有利です。
オス同士が争いになりかけた時、小さい方がさっと引けばそれでおしまい。
では、同じ大きさのライバルならどうなるでしょうか?
すぐに相撲やレスリングのような取っ組み合いが始まります。
そして、相手を倒して上になった方が勝ち。
マウンティングです。
マウンティングが成立すれば、負けた方がさっと引く。
潔い。
見事なフェアプレイ精神です。
彼らは力も強いし毒牙を持っているので、本格的に争ったら大怪我をする危険があります。
死ぬかも知れない。
激しく闘争的なオスが出たきたとしても、その遺伝子は残らなかったでしょう。
だから、マウンティングだけで勝敗を決めるやり方がちょうどいい。
そこで安定したのだと考えられるのです。
「儀式」で決着をつける。
遺伝子に刻まれたやり方です。
マウンティングは餌の取り合いになった時にも、順位決めに使われます。
彼らは食べるにせよ繁殖するにせよ、大きい方が有利なので、どんどん巨大化したと考えられています。
コモドオオトカゲやコブダイに限らず、体の大きさを比べあって優劣を競い合う動物はいます。
一対一の場合、本格的に傷つけあったとしても、大抵は体の大きい方が勝つことがわかっているので、「儀式的」に済ませた方が双方とも得をするわけです。
生きていれば、そのうちいいことがある。
恋に命は賭けない。
生きていれば、そのうちきっといいことがある。
彼らがそう言っているように思えます。
それは合理的な生き方です。
彼らは考えたり悩んだりせずに、そうやって生きています。