どうぶつ

生か死か!東京の庭先で、“命”がめぐる 

TBSテレビで「どうぶつ奇想天外!」のプロデューサーを12年間やっていました。

その中に、制作会社のディレクターが自分のカメラを使い、1年間コツコツと撮影した佳作があります。

それは、東京の弱肉強食。

カマキリとカナヘビ(トカゲの仲間)を中心にした激烈サバイバルの世界でした。

これを見ると「人間で良かった」と思うかも知れません。

庭先の激闘サバイバル

私は撮り終えた映像をいきなり見せられて、びっくりしました。
ディレクターとアシスタントの二人だけで、こっそり撮っていたので、知らなかったのです。

生きものたちは身近な草むらで誕生し、食うか食われるかのバトルを生き延びながら成長していきます。

大きい者が小さい者を食べるバトルロイヤル。

YouTube「どうぶつ奇想天外/WAKUWAKU」で見ることできます。

「カマキリが子トカゲを喰い、親トカゲに喰われる!クモも参戦!庭先の激闘サバイバル」

カマキリたちの“めぐる季節”

春、カマキリ卵嚢から、200〜400匹もの赤ちゃんが一斉にが誕生、白く細長い体がうごめいています。
こういう映像は苦手な人もいますね。
集合体恐怖症の人は要注意です。

生まれたばかりのカマキリをカナヘビが襲います。

赤ちゃんのうちに大半が天敵に食べられて死んでいきます。

カマキリの生まれたばかりの赤ちゃんたち

生き残った幼いカマキリが狙うのは、自分よりも小さなショウジョウバエ。
はじめは失敗ばかりですが、徐々にカマさばきの腕を磨いていきます。

夏になると、生き残ったカマキリは獰猛なハンターに変貌します。

今度は逆に、生まれたばかりのカナヘビの子供をハンティング。
でも、そこへ大人のカナヘビが来ると、攻守は逆転、急いで逃げます。

相手が誰であれ、大きい方が勝ち。

そこにクモやセミも加わって、大自然さながらの弱肉強食の世界が展開します。

生きるか死ぬかは運次第。

秋、カマキリが交尾して、卵を産みます。
ここまで生き残るのは、たった1%ほど。
生命のエネルギーが燃え盛り、燃え尽きて、この卵に込められました。

卵嚢は冬を越し、めぐる季節に逆らうことなく、同じサイクルが繰り返されていきます。

数えきれない「死」の上に「生」がある。自然の摂理です。

その厳しさの中に、「命の輝き」を感じ取ることができます。

ここでは、無数の生きものたちが入り乱れて、複雑なネットワーク・生態系を作り上げています。

東京の生態系にも命が循環している

世界各地には、それぞれの生態系があります。

アマゾンやボルネオの密林地帯、アフリカのサバンナ、オーストラリアのグレートバリアリーフ、知床半島の森と海、西表島の川と干潟・・・。

それぞれの場所で、生きものたちが複雑に絡み合って命を繋いでいます。

そのひとつの姿が大都会・東京の庭先にもあるというのが驚きでした。

身近な自然に目を凝らしてみると、素晴らしい自然界なのだとわかります。

限られた自然環境の中ですが、命が立派に循環しています。

人間で良かった?

このYouTube動画に「人間で良かった…」というコメントが寄せられていました。

そうですよね。今の世の中では、人間が猛獣に食べられることはほとんどありません。
都会に住んでいると、人間とイヌしか目に入りませんし。

食べる食べられるの関係は、人間社会ではむき出しにされていません。

人間だって生きものを殺して食べているはずなのですが、多くの人々は店で商品を買ってくるので、実感がわかないですよね。

数日前には生きていた動物の、お肉。

私はいい歳になりますから、今までたくさんの動物を食べてきました。

※ケニア・マサイのウシ

一頭のウシからおよそ300kgのお肉がとれると言います。若い頃は焼肉食べ放題にも行きましたから、2頭は食べたでしょうか?

とんかつが好きなのでブタなら100〜200頭、ニワトリなら400〜600羽を食べたことになりそうです。

魚はしらすを入れると数えきれません。

どれだけの命を食べてきたのだろうか?と思います。

「人間でよかった…」と思いながら、たまには牛や鶏や魚に思いを馳せるのも悪くないと思います。

人間だって、自然の一部なのですから。

食べた生きものたちが、私の体やエネルギーになっていく。

死があるから、生がある。

果てしない命の循環。