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レジ袋廃止はわかりにくい?【プラごみ問題、その②】

昨年10月、小泉進次郎前環境大臣が退任した時、ネットには「岸田首相、レジ袋を無料に戻して!」という「陳情」が続出しました。
日本人の生活習慣に合わない、不便だ、というのが理由です。

レジ袋の有料化によって何がどう変わったのか?
実感が湧きにくいですね。

ところが、世界的にはレジ袋を廃止して良かった、という場所がいくつもあります。

世界で「レジ袋問題」が切実なワケ

レジ袋を廃止して本当に良かった所。

有名なのは、観光地バリ島の「バイバイ、プラスチック・バッグ」運動でしょう。

2013年、当時10歳と12歳のワイゼン姉妹が、ゴミだらけになった海岸や街を何とかしようと、ゴミ拾い活動やハンガーストライキを始めました。

子供たちの間でSNSで拡散し、ムーブメントが起きて、ボランティアがどんどん増えていきます。

やがて大人たちを動かして「レジ袋廃止」が決定。

その結果、ゴミだらけの海岸が楽園に戻ったのですから、バリ島では「レジ袋廃止」は誰の目にも見える成果だったわけです。

達成感がありますね。

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「レジ袋廃止」は世界的な流れですが、国によって理由は異なります。

ケニアではポリ袋を使っただけで罰金か禁固刑となります。
その理由は野生の魚や鳥が食べて死ぬからです。
生物多様性が失われるだけでなく、サファリツアーなどの観光業にも打撃になります。
食肉用のウシが誤飲して死んだことも、世論の背中を押したそうです。

同じくアフリカのルワンダでは、プラスチック袋が川をせき止めて洪水が起きたから、廃止。
ここでも厳しい罰則があります。

アフリカでは、プラスチック袋が切実な問題のようで、禁止令を出しているのは26カ国にものぼります。

南アジアのバングラデシュは、しばしばサイクロンによる大洪水の被害に見舞われます。
その時、大量のレジ袋が下水を詰まらせるという理由で禁止になりました。

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このように目に見えやすく、生活実感と合っていればみんなが納得ですね。

目に見えるか見えないか。それが人の気持ちを動かします。

しかし実際は、目に見えないプラスチックごみが大問題なのです。

目に見えないマイクロプラスチックが怖い

海に漂うマイクロ・プラスチック。
5mm以下に砕かれたプラスチック片です。

波に砕かれて粉々になったプラスチック片を魚が食べると、繁殖や成長に悪影響が出ると心配されています。

プラスチックには添加剤が含まれています。
燃えにくく、長持ちさせるための化学物質です。

これが毒性を持ち、将来、魚を食べた人の体内に取り込まれて蓄積し、胎児に悪さをすると警告する研究者もいます。

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マイクロ・プラスチックの原因は、波に砕けたごみだけではありません。

タイヤの合成ゴムが摩耗して粉を撒き散らすと言います。
ナショナルジオグラフィック誌に、海に流れ込むマイクロプラスチックの28%がタイヤからのものだという記事がありました。

川崎市が2018年に東京湾を中心に行った調査によれば、浮遊するプラごみで一番多かったのは人工芝だったそうです。
河川敷にはスポーツ施設がたくさんありますね。

次に多かったのが繊維状の破片。
フリースなどの化学繊維が洗濯で擦れて破片になり、下水を通って海に流れていくと考えられています。

こうなると、情報の渦に巻き込まれて、何もできなくなってしまいます。

ゴミ拾いはもちろん良いことなのです。
やった方が良いに決まっています。

しかし、現実には限界がある。

廃棄されるゴミの量も増え過ぎているのです。

ちなみに、日本人ひとり当たりののプラごみ廃棄量は、アメリカに次いで世界第二位です。

見えないものを、見ようとしてみる

タイヤや化学繊維のことは一旦忘れて、国や企業に考えてもらいましょう。

リサイクルする仕組みを構築したり、バイオプラスチックを促進したり、国も企業も動いています。
マイクロプラスチック流出を抑制する人工芝というのもできているようです。

個人のできることは限られていますが、みんなが関心を持てば、現実が動いていく。
最近、政府は世論に敏感です。

自然環境保護に熱心な店を選ぶ、
エコマークがついた商品を買う、
SDGsに熱心な企業を選ぶ、
政治に関心を持つ…。

実は今のところ、これが一番現実的で効果的なエコなのではないかと、最近は思うようになりました。

ウミガメの鼻に詰まったプラスチック・ストロー。

これをキッカケにして、見えないプラスチックごみを見ようとすると、何かが変わるのではないでしょうか。